「お母さん、はい、今日の昼飯です」

「あらっ柚月くんいつもどうもありがとう!
さぁ、上がって上がって!一緒に盛りつけてくれないかしら」

にこにこ上機嫌な母は、新田さんが料理を持参した日は、店舗奥にある自宅に招き入れて二人で楽しそうに昼食の準備をする。

「すっかり柚月は朝陽の通い妻だな」

呆れるように二人を見ている父もどこか嬉しそうで

「早くけなげなアイツを嫁にもらってやれ朝陽」

と気がつけばすっかり外堀から埋められていた。

もちろん私たちは付き合ってもいないし、お見合いもあの後することはなかった。

そもそも、私が断ったはずのお見合いがなぜ、新田さんに伝わっていなかったのか…。

それは、新田さんがどうしても私との見合いの席を熱望していて、断るにしても一度会ってからにしてほしいと強く申し出られ、イケメン好きの母がどうやって私を丸め込もうか思案していた…というのがあの時の話が食い違っていた真相だ。