いつのまにか離された唇は少し物足りなくて、ぼんやりしている私を包み込むようにそっと抱き締めた温もりは何故か心地いい…。

たぶん、私の心はとんでもなくよわっているんだろう。

「…もう、抵抗しないんだ?」

黙ったまま身を委ねている私に

「付け入る隙……ありそうだよな?
今日店に来たとき泣きそうな顔してたから気になって声かけた。
いつもみたいに食事し終えた朝陽を黙ってそのまま見送りたくなかった」

少しだけ抱き締める腕に力がこもった。

「俺と結婚しよう、朝陽」

先程から何度も口にしている彼の言葉が冗談ではないことを、私の耳に早い鼓動を刻む彼の心臓が伝えていた。

でも……

私の心臓はずっと変わらない穏やかなリズムを刻み続けていた。