「今日はずいぶんと正装しておしゃれしてるな。
いつも以上に綺麗だけどこんな時間だから、結婚式の二次会の帰りとか?」

ぽかんと間抜けな顔をしたまま目のに座り、親しげに話しかけてくるオーナーシェフの顔を、私はじろじろと不躾に眺めていた。

「なに?
黙っちゃって。実はシェフが想像以上のイケメンでびっくりしちゃった?」

くすりと笑われて、はっとして我に返った私は、じろじろと見ていたことが恥ずかしくて慌て目を反らせた。

「今日は遅い時間にすみませんでした。美味しかったです。ご馳走さまでした」

と頭を下げると

「いえいえ、こちらこそ来てくれてありがとう。
ずいぶんと姿を見せなくなったから心配してたんだ。
親父さんも入院したって聞いたし」

彼の言葉に、もう一度目の前のイケメンシェフをじろじろと見たが、私の記憶にこんなイケメンは存在しない。

お父さんの入院まで知っている目の前の彼に、私は警戒しながら眉を潜めた。