シンと静まり返った店内に、厨房のほうからコツコツと足音が聞こえてきた。

「こんばんは、お客様お席をご一緒してもよろしいですか?」

トレーにコーヒーカップを二つのせて、ジーンズにトレーナーというラフな私服姿の男性がカップをテーブルに置いて返事を聞かずに私の前の席に腰かけた。

「こんばんは、久しぶりにようやく顔を見せてくれたな」

オーナーシェフと聞いていたので、年輩のおしさんが姿を現すと思っていた私は、私とさほど年齢の変わらない男性の登場にその場から動けずぼかんとしていた。