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「〜♪」

自作した曲をリズミカルに鼻歌で奏でながら、わたくしは彼が居る街へと足を踏み入れた。

伏せていた顔を上げ前髪の中から真っ青な瞳を細めて、観察対象である多くの人間族たちを見つめた。
 
時間は昼間だと言うことあって青空には雲一つない。

そんな中でギラギラと太陽が光を放っていた。
 
さすがに水のベールを羽織っていないと、魚人族にとってこの暑さは厄介ですわね。

直ぐに干からびて死んでしまうもの。

「さて……」
 
彼はどこに居るのでしょうか? 

そんなことを思いながら、左右に目を配った時にターコイズブルーの髪が揺れる。

肌には魚人族だと言う事を表す青緑色の鱗が浮き上がり、それは太陽に照らされて、キラキラと光を放っていた。

「お、お待ち下さい! 姫様!」
 
すると後から遅れて、息を切らしながらわたくしと同じ魚人族である、ミーアが大量の大荷物を背負いながら側へと駆け寄ってくる。
 
その姿に少々呆れながら、わたくしは軽く息を吐いた。

「まったく……あなたまで来ることなかったのよ?」

「そ、そういう訳には参りません! 俺は先代様からは姫様をお守りするように言われておりますので!」
 
この街には一人で来るつもりだったのだけど、結構な長旅になるとお父様にお話したら顔を青くして、こうして付き人であるミーアをお父様は寄越してきた。
 
そんな長期間帰らないわけではないと言うのに。

でも……場合によっては、長期間帰らない可能性もありますけど。