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先程のアルの話を、わたくしは何も言わずじっと聞いていた。

それはアルやレーツェルちゃんたちが心から信じている彼が、どういう人間なのか見極めるためでもあった。
 
しかしアルの話しは、わたくしが思っていた物よりも遥かに重くて暗く、そして彼がどんな思いで、生きてきたのが伝わってくる物でした。
 
話を聞く中でわたくしも少なからず、彼への同情が芽生えていたのは確かだった。

しかし彼に同情する事を、アルは決して許しているようには思えなかった。
 
それは彼も過去に、心から愛していた女性を失っているからだろう。

アルもまた同情されるこちを望まず、許しを請うこともなく、自分を罰しながら生きていた。
 
アルの言う通り人は同情されてしまえばそれに甘えて、自分の犯した罪から逃れようと許しを請う。

しかし同情は何も救ってはくれない。人は同情の言葉を掛けたとしても、自ら手を差し伸べる事はあまりない。
 
でもブラッドは同じ罪や後悔を抱えた人たちを救おうとして、自分の力を振るってきた。

彼は誰よりもその辛さを知っているから。
 
今の話を聞いて、アレスの中でブラッドを疑う事は出来なくなっているかもしれない。

実際、わたくしもそうであるのですから。
 
でも……やはり疑問に思うことはたくさんあるのです。彼はまだ……わたくしたちに隠している事がある。
 
そんな気がしてならないのですよ。