「そこから先の言葉を言うことは絶対に許さない。あいつは誰よりも同情されることを嫌っている。だからあいつは自分でも決して、他人に一切の同情は見せないしすることもない」
 
アルさんはそう断言すると、再び真っ直ぐ前を見つめた。

「知り合いや他人に一回でも同情されてみろ。人は絶対にそれに甘えて、自分を罰する事を忘れる。友人が【お前は悪くない】と言った。親が【お前のせいじゃない】と言った。そんな事を言われてしまったら、必ず人は【そうだ。自分は悪くない】と思い自分のした罪の大きさを忘れ、何事もなかったようにのうのうと生きて行く。だからブラッドはそうならないためにも【同情】は要らないと言い、後悔し続けながら生きていく事を望んだ」

「……っ!」
 
それがブラッドさんの本当の強さなんだと俺は実感した。

きっとブラッドさんは、これまでにもたくさん後悔してきたと思う。
 
その後悔は俺では絶対に抱える事が出来ない程の物かもしれない。

ブラッドさんはそれを全部背負って生きてきた。

それは全て心から愛した一人の女性との約束を果たすために――

「あいつが後悔しながら己の力を振るうのは、二度と同じ過ちを犯さないためでもある。過ちを犯した人間に同情するのは簡単なことだ。ただ、その言葉を掛けてあげれば、側で寄り添っているように見せかける事も出来るし、心から心配しているように見せる事だって出来る。だが本気で心配している奴や、その者に本気で寄り添ってあげたいと思うもの中には当然居る。しかし過ちを犯した者を本当に知る事が出来るのは、同じ過ちを犯し同じ後悔を背負っている者だけだ」