「あいつは……クラウンによって、家族を皆殺しにされているんだ」

「っ!」

「ブラッドの両親を殺したクラウンは、あいつの唯一の妹だったセシルでさえも、自分の願いを果たすためだけの存在として使い、そしてブラッドの最愛の人だったオフィーリアを……殺した」

その言葉に俺の中で怒りの感情が芽生えた。

右拳に力を込めて目を細めて歯を強く噛み締めた。

なぜオフィーリアさんとブラッドさんが、そんな辛い目に合わないといけなかったんだ!

自分の欲望を果たすため、満たすためなら何でもして良いと思っていたのだろうか! 

サルワだって、ヨルンだって! 

そしてクラウンも――

「当然、ブラッドはクラウンを心から憎んでいた。だがそれと同時にあいつは後悔している。自分みたいな存在が生まれてしまったばっかりに、死ななくて良かった両親と妹を殺してしまったと。そして自分と出会わなければ、オフィーリアはもっと長く生きられていたかもしれないと」

「そ、それはちが――」
 
【違う!】と叫び掛けたところで、俺は口元をアルさんによって覆い隠された。

まるでその先の言葉を言わせないかのように。
 
そして俺は遅れて気づいた。

俺が今口にしようとした言葉は、ブラッドさんへ対する同情の言葉だったことに。

【ブラッドさんは悪くない! ブラッドさんのせいで死んでなんかいない!】 
 
その言葉が頭の中をぐるぐると回り、俺は目を見張って瞳を揺らした。

そんな俺の姿を見て、アルさんはゆっくりと口元から手を離した。