きっと高い魔力を持って生まれてしまったせいで、普通の人が出来て当たり前なことを、ブラッドさんは出来なかったと思う。
 
オフィーリアさんを失った時だって、誰でもブラッドさんのせいではないと言うだろう。
 
彼女は元々、星の涙を内に秘めている時点で死ぬ事はほぼ確定していた。

それは避けようのない【運命】だった。
 
だから少し死期が早まっただけだ。

お前は全力で守ろうとしたじゃないか。

死んでしまったものは仕方がない、だから深く思いつめるな。
 
など、数多くの【同情】と言う名の言葉が、彼に向けられた事だろう。

「……その人体実験を行ったのが、クラウンだったんだ」

「っ!」

ふとそんな事を考えていた時、俺はその名に伏せていた顔を上げた。

「クラウンは、子供ながらに高い魔力を秘めていたブラッドに興味を持った。あの男はただの興味本位という理由だけで、ブラッドにありとあらゆる実験を施した。しかし結局、なぜブラッドが子供ながらに強い魔力を持っていたのかは分からなかった。そしてあいつに最後に……ブラッドに魔眼を与えた」
 
【魔眼】という言葉に、俺はブラッドさんが常に右目を包帯で巻いていたことを思い出した。

暴食の粒子と戦っている時に一度見た、禍々しい光を放っていた紅い瞳。

ブラッドさんはそれを隠すために、いつもに包帯を巻いているのだろうか?

「魔眼のおかげで、ブラッドは魔力によって体がうなされる事もなくなり、それ以上に誰よりも高い魔力を手に入れた。そう……あいつは望んでいた体を手に入れたんだ。だがそれはそれまで普通の子供だったあいつを、壊すきっかけにもなった」

「普通の……子供」
 
そうだ……たとえ、高い魔力を持って生まれた存在であっても、ブラッドさんは周りに居る他の子供たちと同じで【普通の子供】だったんだ。

でもそれを……クラウンは奪ってしまった。

「今のあいつはとくに魔眼の事は気にしていない。むしろあって良かったと、前に言っていた。あいつはそれを使いこなしているし、あの魔眼のおかげで助かった事だってあった。ただ……」

「……ただ?」
 
アルさんは額に巻いている赤紫のバンダナに触れると言う。