女の子はこっちに気が付かない様子で、
ざくざくと穴を掘り続けていた。

暫くすると、ぴたりと手が止まった。
そしてごそごそとポケットを漁って、種を取り出した。

(何の種やろう? 幼稚園のときに見た、朝顔の種とは形が違うなぁ)

首をかしげると、不意に女の子がこっちを見た。

「なぁ」

(声、掛けられた!)

僕はドキドキした。
返事をしようとしたけど、喉がつまって中々喋られなかった。

「えっ…な、なんや?」

にこりと女の子は笑った。

「この種、何かわかる?」

(……えっと、何やろう。わからんわ)

首を横に振った。
女の子は少しがっかりしたみたいだった。

「これな、花をつけたら夢がかなう種やねん」

女の子は僕の耳に、形のいい唇を近づけて、
ヒミツの話をするみたいに言った。

「特別やで。君が願いしてもええよ」

「……玩具とか、お菓子とかでもえーん?」

「うん」

「……えっとなー、何でもいーんやんな?」

僕は少しだけ考えてから

「だったら、友達が欲しい」

って言ったんだ。