「えっと…大丈夫?」

「…はっ!?」
さっきから先生に話しかけられていたのに、妄想をしていて気づかなかったみたい。

好きな人に妄想している姿とか見られたくないな…
もう見られているけど。

「えっと…何ですか?」

「目の調子はどう?って聞いたんだけど…」

「目の調子?大丈夫です、順調です。」
もう自覚症状もほとんどないし、退院したいなと思っている。でも、油断ならない。

「そっか、順調でよかったね。他に心配なこととかある?」
こうやって、病気のこと以外でも心配してくれる優しい先生。

こんなお医者さんになら、わざと病気になってでも見てもらいたいぐらいだ。

「やっぱり1ヶ月も休むと勉強が心配です。」

絶対追いつけないと思うんだ。
私が行っている学校は進学校の部類に入るし。

「う〜ん、先生が勉強見てあげようか?
昼休みとか、休診の時とか、夜も家近いから教えられるよ。」

「えっ?いいんですか……」

「もちろん、患者さんが困ってるんだもん、医者として助けるのは当たり前だろ?」

「…ありがとうございます。」

「いえいえ、じゃあ早速昼休みに来るね。」

「……はい!」

控えめに返事をしたけれど、本当は心臓が口から飛び出るぐらい緊張したし、飛び上がるほど嬉しかった。

先生が私のためだけに時間を割いてくれるのだから。

先生と一緒にいられる時間が増えるのか…

そしたら先生との距離も縮まって……

どんどん妄想が膨らんでいく。

だから退屈な入院生活だけど、あっという間に時間は過ぎていった。