いつも通りドアに手をかけた時、勝手にガラッと開く。
目の前には、顔の整った化粧を少し濃いめに施した女の子が立っていた。
「あ。あんたまだ付きまとってんの?」
「……」
「シカトかよ」
舌打ちをされたあと、あたしの肩にぶつかって去っていった。
あの子、あの時の子だ。
まだ……諦めてないのかな。
部屋の中を除くと、彼は寝息をたてて寝ていた。
「起こさないようにしないと…」
静かに椅子に座り寝顔をみつめる。
いつもと変わらない顔なのに…違う人みたい。
「あ。」
手が布団から出ている。
今日は肌寒いし、これは直したほうがいいよね。
手に触れようとした時ふと自分の中でなにかにブレーキがかかる。
あたし、触れるの?
あたしがこの人に触ることは許される?
ダメだ。
許されない。
この人に触る権限なんてあたしにはない。