控えめに『お邪魔します』と言って
 玄関を上がり
 階段に足をかけた時。

 十環が俺を引き留めるように
 話し始めた。


「龍牙さん。1つ言っておきますけど。
 あれ、姉さんの優しさですからね」


「あれって何のことだよ」


「龍牙さんと姉さんで
 バトルゲームをした後。

『最後は俺が勝った』って
 いつも龍牙さんが喜んでますけど。

 プロゲーマー並みの姉さんに
 龍牙さんが勝てるなんて
 ありえませんからね」



「小百合が俺のために
 わざと負けてくれてるって言うのかよ」


「そうでしょうね」


「なんで、そんなことするんだよ」


「だからそういうところが
 姉さんのわかりにくい優しさなんですよ。

 なんで負けてくれるのかは
 自分で聞いてください。

 あと、俺。
 龍牙さんが帰るまで
 1階のリビングにいてあげますので」



「は?」