心臓を思いっきりえぐられたような
 鋭い痛みに耐えていた時

「龍兄、入るからね」

 勢いよく
 俺の部屋のドアが開いた。



「桃!
 俺がいいって言ってから入って来いよ」


「ノックする気に
 全くなれなかったから!」



 明らかに怒りモードで
 目が吊り上がっている桃。


「小百合さんに聞いたんだけど。
 会社の同僚と付き合うって」


「そうみたいだな。
 明日、返事するって言ってたし。
 それにしても
 なんで桃が怒ってんだよ」


「別に怒ってなんかないよ。
 せっかく
 龍兄が小百合さんとくっつくように
 協力してあげたのにって思ってるだけ!」


「お前さ、勝手な事するなよ。
 今日俺に
 十環の家について来て欲しいって
 言ったのだって、
 このためだったんだろ?」


「だって龍兄。
 小百合さんのことが
 気になってるくせに、
 ウジウジしてて
 なんにも行動しないから」


「別に。
 小百合のことなんて
 なんとも思ってねえし」