モヤモヤした気持ちの中
 一応、ぼそりとお礼を伝えた。


「ありがとう」


「おう」


「なんでここに連れてきてくれたわけ?
 龍の秘密の場所なんでしょ?」


「ここはさ、俺の前のトドメキの総長が
 教えてくれた場所でさ。

 人に弱み見せれなくて
 強がってばかりいた俺を連れて
 よくここで、俺の話を聞いてくれてさ。

 俺がトドメキの総長になった時に
 この場所を俺に譲ってくれた」



「ふうん。
 でも、こんな絶景なら、
 他にも人が来るんじゃないの?」


「ここは、前総長の親父さんの山。

 親父さんにも
 かわいがってもらってたからさ。
 俺だけの場所にしてくれるって
 言ってくれてさ」


「心の大きい人たちだね」


「マジで、俺もそう思う。

 俺も、そんな人間になりたいなって
 思ってた時に、十環を見つけてさ。

 こいつのこと助けたいって
 すっげー思った」



「中1の頃の十環でしょ?
 髪の毛、水色にして。

 私たち家族のことも
 学校の友達のことも
 拒絶するようになって」



「俺が初めて十環を見た時さ
 神社で刃物を見つめてたからな。

 自殺するんじゃないかって思ったし。
 マジで」



「十環のことは、本当に感謝してるから。

 十環が龍と出会ってなかったら、
 今でも十環が私たちを
 拒絶してたと思うと、ゾッとするしね」



「なんだよ。小百合。
 感謝とか言うなよ。
 調子狂うじゃん」