イマイチな気分で玄関を開けると。


「…あれっ?」

 私のより大きな男物の靴が並べてあった。


 もしかして!?


「お兄ちゃん!?」


 バーン!とリビングの扉を開けると、ソファに座っていたのは、兄の楓空(そら)。

 ソファに駆け寄りながらメガネを取り、お下げを解く。


「久しぶり、七海」

 柔らかく微笑んでくれた、優しくて大好きな兄。


「帰って来るなんて、聞いてなかったよ!ビックリしたっ。嬉しい!」

 楓空兄は私なんかよりもっと頭も良くてかっこよくて憧れなんだ。