「…す、すみません。音がして…本が、落ちてて拾おうと…」


 おずおずと、本を差し出すと、受け取る。


「…ああ…ありがとう」


 窓の外を見ると、もう夕暮れ。

 そろそろ、帰ろうかな…。


 そう思って立ち上がると、

「その本」

 今度は下から声。


「それ、読んでるの?『薔薇の木曜日』」


「知ってるんですか?」

 思わず目を見開く。だってこの本、全部英語。


「うん。いいよね、それ。でも続編でしょ。本編はここにはないから、まだ読めてないんだよね…」

「あっ、本編なら私、持ってます。今度貸しましょうか。お父さんのなので古いんですけど、良かったら…」

「え、本当?ありがとう」