そう言ってニコニコと笑う梨々ちゃんが結ちゃんと重なって思わず息を呑んだ。


「…ん?どうかした?七海ちゃん」

「い、いや、なんでもない…」


 慌てて授業に集中する。


「これを、この数式にあてはめて…」


 先生の声をぼうっと聞きながら、視界に映る皐月 昴の後ろ姿。

 下を向くと、同時にサラッと綺麗な黒髪が流れる。


 ————お父さんの髪に似てる…。


 『七海。七海は七海らしく生きるんだよ』

 そう言って頭をポンポンと撫でてくれたお父さんの大きな手。