母親を亡くしてからは父にどうしても認めてもらいたかった。

 振り向いてもらいたかった。


 小学生なのに遊びもせず、休み時間も放課後も勉強し続けた。

 父が笑ってくれることなんてないと分かっていたのに。


 俺はただ、優秀でいなくてはならないただの父の道具だ。

 
 だんだんと自信が無くなってきた。

 したいことなんてない。

 するべきことは、決められた義務をこなすことだけ。

 
 それでもリュウやハルキや他の人を見る度に思っていた。


 俺がいる意味はあるのか。

 俺は本当に必要なのか。


 悩みは誰にも打ち明けられず、ただ溜まっていくだけ。


 もう全てを諦めてしまおうか、そう思っていたときだった。



 …彼女に出会ったのは。



 最初は特に興味もなかった。

 
 でも、図書室で初めて話した日。

 自分の好きな本を七海も好きって聞いて話が弾んだ。

 友達のような感覚だった。

 
 でもそれは彼女のお面に過ぎなかった。

 本当は辛い過去を抱えて生きている。

 それが俺に似ていると思った。