「昴くん、昴くん…っ。着いたよっ」
ゆさゆさと揺すられて目覚めると、窓から見える空はもうほぼ暗くなっていた。
「ん……っ。ごめん、寝てて」
「ううん、ぜんぜん大丈夫だよっ。忙しいのに連れて行ってくれてありがとう…」
誘ったくせにずっと寝ていた俺を怒りもせずに優しく笑ってくれる。
心なしか顔がちょっと赤いけど。
そういうとこが、ほんと———。
「危ない」
電車から出ようとすると、七海のそばをガラの悪いおじさんがぶつかりながら通っていく。
思わずよろけてしまった彼女をとっさに支える。
「ひゃっ、ご、ごめん……っ」
「ううん、どこかぶつけなかった?大丈夫?」
「うん、どこも…。心配してくれて、ありがとう」
七海が笑顔を見せる度、メガネを取りたくなる。
可愛い笑顔を、もっとちゃんと見たい。
俺のそばで笑っていて欲しい。
きみだけに。