過去の不安はそう簡単には拭えない。



————ぎゅっ。



「……え?」



突然、右手に温かい感触。


昴くんが手を繋いできた。



ボーゼンとしている私に、隣に座っている昴くんはクスッと笑うと



「今日はデートだからね」


「っ…!」



私きっと、情けない顔してる。


好きな人と隣に座って、手を繋いで。


たとえ、昴くんにしては何でもないようなことだとしても。


私にとっては、いちいち心臓がうるさいくらいだよ。


て、手汗大丈夫かなっ!?



私が1人慌てていると、昴くんが窓の外を指さした。



「あっ、ほらアレだよ。茶色の大きい建物」