「……メガネ…」


「へっ?」


「ここ、ちょっと汚れてる」


「えっ、ウソ…どこ?」



 ここ、と皐月くんがチョンとメガネのフレームに触れる。


 それだけなのに、なぜかドキッとしてしまった。



「あっ…ありがとうっ」



 いつもはメガネ拭いて家を出るのにな。


 慌ててメガネを外して確認すると、確かに
フレームに汚れがついている。


「あ、これ朝作ったお弁当の唐揚げの粉…」


 そう呟くと、横で皐月くんがブハッと吹き出した。


「え、え!?どうしたの皐月くん…!?」


「唐揚げの粉って…日向さんて、面白い」


 あっちを向いたまま、肩を震わせる皐月くん。


 そんなに笑わなくてもよくない?


 ゴシゴシと拭くと、すぐに粉はとれた。


「あ、そういえばさ…」


 笑っていた皐月くんがこっちに振り向く。

 私も顔を上げる。



 …と。




「………………っえ」




 なぜか皐月くんが目を見開き、私の顔を凝視した。


「え?」


 その顔はいつもよりクリアに見える。



 …………て、私……!!!!



 メガネ!かけてない‼︎