そんな梨々ちゃんの様子を敏感に読み取ったらしいお兄ちゃんがそう言ってきた。
「うん…じゃあねっ、梨々ちゃん」
えー、と不満気な梨々ちゃんにコソッと囁く。
「今度、スマホの中のお兄ちゃんの写真見せてあげるから」
途端キラキラ笑顔になった梨々ちゃんはご機嫌良くじゃねー、と手をひらひら振ってくれた。
お兄ちゃんに相談したいことがある。
きっとお兄ちゃんはそれを分かっている。
「じゃあな日向」
「ああ」
梨々ちゃんカップルと別れた私たちは足早に正門へ向かった。
豪華な正門前にはお兄ちゃんの自動車が停められている。
運転席と助手席にそれぞれ乗り込んだ。
「……お兄ちゃん」
出発しないまま。
ヤケに雨の音が大きく聞こえる。
「…………大丈夫だ」
優しく微笑んでくれたけど反対に私の心はズシンと重くなる。
……ああ、また。
迷惑を、かけてしまった。