「落ち着いてなんかいられないわよぉっ!いったい何がどうなって、あの皐月昴とハグしてたの!?」


 興奮気味の梨々ちゃんにガクガクと揺すられながらも何とか落ち着かせる。



「あのね、そこからが誤解でね。決してハグしてたわけじゃないから。私が転けそうになったのを支えてくれたの」


 でも、石鹸のいい香りがしたなぁ…。
 
 って、違う違う。


「…えー、ハグじゃないの?」


「うん。断じて」


「でも凄いねー七海ちゃん。あの皐月昴の胸に飛び込むなんて、ダ・イ・タ・ン♪」


 えぇえええ?


「ちっ違うって、だから…」

 私は皐月くんが好きなわけじゃないの。


 だからあれは事故…というより、助けられた的な。


 深い意味はないんだから。


 そう力説すると、面白くないなぁ、と唇を尖らせる梨々ちゃん。


「でももし、そーゆーことになったら私全力で応援するからね〜」


 ……だーかーら。違うんだってば…。


 楽しそうにしている梨々ちゃんはもう止められないかも。


 本、早く返して帰ろう。


 
 



 


 あれ、LINEだ。

 晩ご飯を食べて、お風呂からも上がって、部屋で1人ゴロゴロしていた頃。


 ロック画面に表示された名前は、『皐月昴』。


「え?」


 何の用だろう。ちょうど5分くらい前に送られてきている。