「ええと…っ!あ、あった……あっ!」

 バッグの中を探して本を取り出す。慌てていたからか、あった、と思った次の瞬間、そばにあった椅子の脚に引っかかってしまった。



 ……!!


 もう何してんの私!!今日1日、ぶつかったりつっかかったり…。


「危ないっ」



 ボスン。

 受け止められて何かにフワッと包まれた。



 爽やかな、石鹸のような香り。一緒に帰ったときと同じ香りだ。


 そして、温かい。


 皐月くんの体温を制服越しに感じる。

 

 お兄ちゃんのような、安心感…。








「…………………七海、ちゃん?」



 後ろから、声がした。


 ハッと振り返ると、入り口のところに梨々ちゃんが呆然と立っている。

 オマケに持っていたバッグを落とした。


「はっ…え、え?」

「え?」


 そして、気付く。

 今の自分の体制。