「それでさぁ、お母さんが無言でフォークでマカロンぶっ潰したの。もったいなくない〜?」

「へ、へぇ…」

「七海ちゃんにも今度あげるね」

「あ、ありがと…」


 なぜかマカロンの話になりつつ歩いていると職員室の前。



「じゃ、また後でね〜」


 梨々ちゃんは中に入っていき私はエレベーターに乗り込む。


 東棟にはほとんど人がいない。誰とも会うことなく図書室の前に立った。


「失礼しまーす…」



 相変わらず誰の姿も見えない図書室。実は一回だけ西棟の方の図書室に行ってみたんだけど、たしかに人が大勢いた。それと比べると実に対照的。


 本を返したら時間余るよね。何か本を読んどこうかな。


 カウンターへ行こうと本棚を曲がると。



「きゃっ!?」

「うわっ」


 ドシン。

 何かにぶつかって肩からバッグが落ちる。


 ………!

 私も、後ろに倒れる…!


「………………っ危なかった…」

 倒れて、ない。

 聞き覚えのある声に目を開けると、そこには皐月くん。


 それに私の腰に皐月くんが腕を回して支えてくれていた。