『トップになれ。目指される存在になれ』

『そうなってこそ、皐月家の人間だ』

『出来損ないの奴は家の人間じゃない』


 散々、言われてきた親父の言葉。

 思い出す度、頭と心臓がキリキリする。



 でも。

 あいつの笑顔を見た瞬間、そんな痛みは消えたかのように無くなったんだ。

 

 初めてだったんだ。

 誰かの笑顔で、傷が癒されるような、そんな気がしたのは。


 それに、その子の瞳は、俺と同じような色をしていた。

 何かに耐えているような。

 それでいて、強い意志があるような。


 暖かく、どこか儚い。


 そんな思いが、見えたんだ。



 とにかく、その日向さんが戻ってこない。