————よし。


 深呼吸、ひとつ。


 私は今図書室の前。大事に胸に抱えているのはこれから貸す予定の『薔薇の木曜日』。



「失礼しま〜す」

 入った途端の本の匂い。2回目だけどやっぱり落ち着く。

「皐月くんー…?いますかー?」


 見渡しても彼の姿はない。まだ来てないとか?それとも忘れた?


 いや、奥にいるのかも。


 そう思って、一歩前に出ると。

「日向さん」


 イキナリ、後ろで声がした。


「っきゃあっ!?」


 振り返ると、皐月くん。いたんだ!?

 ビックリしたよー…。


「ごめん。驚かすつもりはなかったんだけど」

「いや、こっちこそビックリしてごめん。
 はいコレ、本編のだよ」

「ありがとう」