一瞬で、彼のカオが曇った。

「俺はあの笑顔ひとつで、すべて諦めた。だからここに来たんだ。いつもの俺に戻してくれるのは、二人だけだから」

修二は曇らせた表情のまま言った。

「わからないよ、俺には。颯多の気持ちもハルの気持ちも」

そこで言葉を切る。

少し意思の強めな顔になって、つづける。

「だから、聞くんでしょ。わからないから言葉にするんでしょ。心の中のことなんて、想像や予想することはできても、それが本当の気持ちだってわからないだろ」

「だいたいさ、何を怖がる必要があるんだよ。おまえが今言ったんじゃん。俺たちのところにきた理由。颯多が、どうなったって、俺たちはおまえの話を聞くし、絶対に見捨てたりしない。まさか、信じてないの?」

「そんなことない、信じてるよ。でも」

いつもは優しい修二の眼差しが俺を射抜く。

話を聞いてたハルが口を開く。

「颯多はうだうだ言ってないで、こいつの言うこと聞きなさい」

「ハル?」

おれの気持ちをまったく無視した発言に思わず、ハルを見る。

ハルは続けた。

「それがいつもいちばん幸せなんだから」

それがいつもいちばんしあわせ?