修二とハルもあの和奏さんの幸せな笑顔を見てないから、そんなことが言えるんだ!

まだ話しを続けようとする修二の言葉を遮った。

「勘違いしてるのは、修二たちだよ。俺はこの目で見たんだから。二人がデートしてるところも。キ、キスしてるところも」

俺がギャンギャン喚いてるのに、修二は笑顔を崩さない。

当たり前のように、落ち着けとばかりに俺の背中をなでる。

「だから、そこが混同しちゃってるってこと」

「何と何が混同してるってんだよ!」

怒りがおさまらない。

「さっきも言ったけどさ、和奏さんが誰かと付き合ってることと、おまえが彼女を好きなことは、別のことなんだよ」

「そんなのわかってる」

「わかってない」

修二はさっきまでの余裕の笑みを消して、真剣な顔つきに変わる。

「わかってないから、ありもしない事実を作り上げてるんだよ」

「ありもしない事実?」

「『颯多がフラれた』って言う仮想の事実」

「それって俺にもまだ望みがあるってこと?」

「まだ?これからしかないじゃん」

「告白しなくても終わる恋だってあるだろ」

「そりゃあるだろうけど。それだって、相手の気持ちを確認できたときでしょ」

修二が優しく語りかける。

「ねぇ、颯多?彼女が今幸せだとしたら、もうおまえは彼女を幸せにできないの?」