23時10分前、俺は和奏さんとの待ち合わせ場所に着いた。

電車到着は23時、改札前には、ほとんど人影がなかった。

改札を出て正面の柱に寄りかかり、彼女の到着を待つ。

わざわざ電話をかけてくるなんて、ほんとに何もなかったのか、気になる。


だいたいさ、仕事は問題なくて、和奏さんがあの人と会ってたとしたら、なんで俺に電話してきたんだろう?

俺に仕事以外で連絡してくること自体考えられない。
だとしたら、なんか複雑な事情とかあって電話じゃ話しづらいとかあって、でも、俺に助けを求めてるって考えるのが普通じゃないか?

今までの彼女はいつだって、自分でできることは自分で。できないことがあったらちゃんと相談する。それでもすぐにSOSが出せないでいたのだ。

最近のチームでの仕事を振り返ってみる。

クレームになるようなことも、資料が遅れてることも見当たらない。
上からいきなりなんか言われたとか?

うーん、考えにくい。

じゃあなんだ?

考えている間に時が過ぎていた。

わらわらと改札を人が抜けてくる。

その人並みの中に彼女はいた。