船内の食堂は朝食をとる人たちで賑わっていた。その殆どがこの船の乗組員だ。

 ツェリウス王子が用意してくれたこの船はヴァロール港とサエタ港とを行き来する貨客船で私たちのような乗客よりも乗組員の人数の方が多い。皆揃いの帽子を被り顔を合わせれば笑顔で挨拶してくれる気の良い人たちばかりだ。

 ちなみに私たちが王子と関わりがあると知っているのは船長さんだけ。目立たないよう普通の乗客と同じように接して欲しいと王子の手紙には書いてあったらしい。ただ少しだけ上等な船室を用意してくれた。これがずっと船室で横になっていた私には有難かった。

 と、空いている丸テーブル席に腰かけた私たちに早速声がかかった。

「おう嬢ちゃん、具合はどうだい?」

 真っ黒に日焼けした逞しい身体。見るからに海の男という風貌のおじさんだ。確か一昨日ふらふらとしていた私に船尾の方が揺れが少ないぞと教えてくれた人だ。