「私がアンネストールに行った理由は、両親や妹から逃げるためなんだ」

かぐやは過去を振り返りながら、エヴァに全てを話した。自分の過去を話すのは初めてで、かぐやは途中で何度も口を閉ざしてしまう。それでも、エヴァはかぐやの言葉を懸命に聞いてくれた。

「物心ついた頃から、私は両親に愛されなかった。愛情は全て妹に注がれた。私は何をしても怒られるけど、妹は褒めてもらえる。それが悲しくて、腹ただしかった」

そんな中、自分の世界に浸れるものを見つけた。それは本だ。素晴らしい物語を読むうちに、かぐやはいつしか自分も書いてみたいと思い、物語を書くようになった。

「でも、両親からの差別は年々激しくなっていって、妹も私を馬鹿にして、もう限界だった。私は何も考えずにアンネストールに飛び出して、困っていたところをシリウスさんに助けられた」

その時、かぐやの目から涙がこぼれ落ちる。誰にも言えなかった暗い過去は、今でもかぐやを苦しめ続けている。