かぐやの頭に今あるのは、シリウスのことではなかった。昼間の家族のことだ。

家族はかぐやとエヴァを温かく歓迎しているように表面上は見えた。しかし、歓迎されているのはエヴァだけだとかぐやはすぐに見抜いていた。

両親や妹もエヴァにしか話しかけない。かぐやにはアンネストールでの生活は何も聞かず、都合のいい時だけいるものとして扱われた。それ以外では、些細なところで歓迎していないとアピールされていた。

「……私の話を、聞いて……」

かぐやが消えてしまいそうな小さな声で言うと、「もちろんです」と凛とした声が返ってくる。かぐやは顔を上げ、エヴァの目を初めてしっかり見た。その目はこんなにも美しかったのだとかぐやは驚く。

「かぐやさんのお役に立てるのなら、私はどのようなことでも頑張ります」

まっすぐにエヴァに見つめられ、かぐやは「う、うん……」と胸をドキドキさせる。まるで恋のときめきのように、鼓動がうるさかった。