かぐやが家族に帰って来るよう言われた理由は、さくやの婚約パーティーが開かれるからだ。相手は有名な老舗会社の社長らしく、両親は喜んでいた。

「かぐや、妹のために舞ってくれないかしら？」

猫撫で声で母に舞を披露することを頼まれ、かぐやは手元にある扇子を見てため息をつく。自分はこのためだけに呼ばれたのだ。

「かぐやさん」

不意に声をかけられ、かぐやは隣を見る。すると、この国の着物を着たエヴァが立っていた。お風呂から出たばかりらしく、頰がほんのり赤い。

「ちょっと！急に出てこないでよ。びっくりしたじゃない」

かぐやがそう言うと、エヴァは「申し訳ありません」と素直に謝る。やはりエヴァに優しくすることはできない。かぐやはそれが苦しかった。

「お風呂、かぐやさんで最後だそうです」

それだけ言い、エヴァは客人用の部屋に向かおうとする。その手をかぐやはなぜか掴んでいた。

「……かぐやさん？」

エヴァの戸惑ったような声に、かぐやは何も言うことができない。ただジェスチャーで隣に座ってほしいと告げると、エヴァは隣に腰掛けてくれた。