「何でもないわ……」

かぐやはさくやから目をそらす。一つしか歳は変わらないのに、何もかもが正反対なのだ。かぐやは影でさくやは光。ここにいることがかぐやにとってはただ虚しかった。

「あなたは?」

さくやの問いにエヴァが「お初にお目にかかります。かぐやさんと同じ劇団で仕事をしているエヴァと申します」と言っているのが聞こえる。それにさくやは何か言っていたが、かぐやは聞きたくなかったので別のことを考えていた。

「姉様、エヴァさん、中に入りましょう!!」

さくやはそう言い、二人を屋敷の中へ案内する。一瞬見えた横顔はかぐやを馬鹿にしたような笑みだった。

何も変わっていない、とかぐやの胸はなぜか締め付けられた。



夜になり、かぐやは何年ぶりかの自室へ入った。部屋は出て行った時と何も変わっていない。

かぐやはしばらく部屋を眺めた後、縁側に出た。美しい月が夜空を照らしている。幼い頃はよく月を見ていたな、とかぐやは懐かしさを感じた。