悔しさになのか、重ねられた裏切りになのか、虚無感にか、涙が溢れだす。

うつむき、表情をなくしたままポロポロと涙を流す私を見て、光川さんはうんざりしたようなため息を落とす。

住宅街の一角の脇道。
それぞれの家からわずかに漏れる生活音と、電車の音だけが聞こえていた。

太陽は沈み、空がゆっくりと夜へと色を変え始める。

「泣かれると俺が悪者みたいじゃないか。……そもそも、三咲さんだって軽く付き合ってただけだろう? その証拠に、メッセージひとつで別れを告げたくらいだし、冷たいのはお互い様だろ。イベントの時会えなくても文句言うわけでもないし、他に男がいたんだろ――」

「そのへんにしとけよ」

突如割り込んできた声に驚いて顔を上げる。
見れば、光川さんの向こう側に険しい顔をした伊月がいた。

伊月は、状況がわからず何も言えずにいる光川さんの肩を、すれ違いざまにグイッと押し「勝手なことばっか言ってんじゃねぇ」と軽く舌打ちする。

それから私の隣に並ぶと、未だ唖然としている光川さんに口を開く。

「こいつはサバサバして見えるかもしれないけど、情がないわけじゃない。二年も付き合ってたらどんな最低男だろうが簡単に忘れられないし気持ちだって割り切れない。そういうヤツだろ。おまえ、二年間こいつの何見てきたんだよ」