「……全部、嘘だったの?」

無意識にもれた問いに、光川さんが笑った気配がした。

「嘘なんて、ずいぶん失礼な言い方だな。実際、俺は君に充分すぎるくらいに優しくしてあげただろ? たとえそれが本心からじゃないにしても、いい思いをしたんだからそれでいいじゃないか」

変わってしまった光川さんを前に……本当の光川さんを前に言葉をなくす。

心が静かに死んでいくみたいだった。
あまりに突然な別れだったから、未だ整理できずにいてそれは時に苦しくもあったのに……こんな簡単に最後を迎えられたのかと自分でも驚くほどに冷たくなっていく。

「君が頼りがいのある男が好きそうだったから、そう演じてきた。紳士的で優しい男が好みみたいだから、その通りに接してきた。君の理想をカタチにしてあげてたんだからいいだろう。ゲームとしては楽しかっただろ?」

「……ゲーム?」
「ゲームだろ。結婚に繋がらない恋愛なんて、いかに楽しくこなすか、正直、それしか考えてないよ。三咲さんもサラッとした態度だったし、同じように考えて上辺だけで楽しんでるのかと思ってたけど……もしかして違った?」

恋愛観はそれぞれ自由だ。だから、光川さんがそう考えていたとしても私に文句を言う筋合いはないのかもしれない。

だけど……そんなゲームは、価値観が合うひととしてほしかった。
私は、違う。

ただ、光川さんに面倒がられるのが嫌だったから色々なわがままを我慢していたことが、光川さんには違うふうに伝わっていたようだった。

本当に……この二年間、私はなにをしていたんだろう。
お互い、本心なんてひとつも見せ合っていなかったなんて。