「ずいぶん、都合がいいですね」
きっと、軽蔑していることは隠せていないだろう。
そんな私を見た光川さんが驚いたような表情を浮かべたけれど、そのまま続けた。
「三股がバレたっていうのに、結婚するっていうのに、その上で付き合って欲しいだなんて……私に、本命じゃないけど我慢して付き合えなんて……どれだけバカにしたら気がすむんですか?」
光川さんは信じられないとでも言いたそうに目を見開く。
それもそうだろう。付き合っているとき、私はこんな態度をとったことはなかった。いつだって仕事の大変さを見せない光川さんを尊敬していたから。
たまに出るデリカシーのない言葉も、ただ疲れてうっかり出てしまったんだろうと聞き流していたし、揚げ足を取ったこともない。全部を彼優先に考えてきた。……好きだったから。
機嫌を損ねるのが本当に怖かったから。嫌われたくなかったから。
でも、今は違う。
もう……呆れた。
割り切れず、膿んで痛みを増していくだけだった光川さんへの想いが、光川さんの身勝手な言動のおかげで振り切れる。
大事になんてされていないんだと、だから私だって大事に想わなくていいんだと、思い知るには充分すぎる言葉だった。
「気持ち、わかりますよ。私、光川さんにとってはこれ以上ないほど都合がよかったですもんね。だから、適当にお詫びのプレゼント渡して機嫌とって、結婚してからも今まで通り都合よく使いたいって思ったんですよね」