気が弱そうに見えるのに、実はしっかりしている部分に惹かれたことを思い出した。

終電間際、駅構内を歩いていたときに酔っ払いに絡まれたことがあった。
その時、光川さんは毅然とした態度で酔っ払いを制止していて、そんな姿を頼もしいと感じたけれど……それも過去の話だ。

平気な顔して三股もかけていた事実を知った今、過去のどの彼を信じればいいのかも、また、信じようとも思えなかった。

「これ……三咲さんに似合うかと思って」

渡されたのは小箱だった。
華やかなラッピングが、中身がアクセサリーだと物語っている。

それを見て、ああ、私の機嫌をとるためにわざわざ来たのかな……と想像がついた。いつかの土井さんみたいにオフィスで暴れられたら困るから、先手を打ちにきたんだろう。

早い話が口止めだ。
それに気づき、気持ちがスッと冷めた気がした。

工事を終えた作業員が乗ったトラックが工事現場から出ていく。
そのエンジン音が遠ざかるのを聞いていると、光川さんが続ける。

「三咲さんを傷つけたことは、心から申し訳なく思ってる。でも、好きだった気持ちは本当なんだ。告白だって適当な気持ちでしたわけじゃない。それと……あんな形で知られてしまったこと……あまりに配慮にかけていた。本当にごめん」

真面目な表情の光川さんをしばらく見つめて……それから目を伏せた。