気恥ずかしくなって誤魔化そうと振り返れば、美里は両手で口を押さえていた。
「なにそれ……すっごい素敵じゃない!え、あなた本当に徹さんよね?」
「俺が徹じゃなかったら君はこうして知らない男と寝るのか?」
「そういうことを言ってるんじゃないでしょう。やっぱり徹さんね。もう一回!」
「もうしない」
「えー!ケチ!」
首にタックルをかまされ、そのままふたりでベッドに倒れ込んだ。
「あーあ、つかの間の休息は激務という名の荒波にもまれちゃう。この世から病気がなくなったらいいのに。あと事故と殺人も。死ぬのは老いだけで充分よ」
「君は確実に老死だろうな」
「あはは、徹さんの精神も大概だ。でもたしかに。きっと、あなたよりずっと私のほうがタフだわ」
「タフすぎるんだよ、全く」
幸せだった。
実を言うと俺は、心から子供がほしいとは思っていなかった。
が、美里が願うのであればそれもありだろう……と。
彼女との子なら、彼女となら、きっと幸せな家庭を築いていける。
そう、思っていたのに。