「そういえばなんで敬語なの?」
「敬語?」
温泉街にはそこら中に足湯があって。
あまり人がいないところを選んで私たちは足湯を楽しんでいた。
さっきまで違うことを話していたから、
急に話題が変わってきょとんとする。
「花平くんに敬語使ってたから、なんでかなぁって思って」
ああ、花平くんのことか。
「それは、……なんでだろう?」
思い返してみれば、コンビニで出会ったとき私はバイト中だったわけで。
接客中は基本的に敬語だから、そのまま染みついちゃったのかも。
今さらタメ口にしようにも切り替えが難しい。
やっぱり同い年なのに敬語なのは変かな。
こっちゃんはふーんと足でお湯を蹴飛ばした。
ぱしゃりとはねたお湯が波紋状に広がって、消える。
「カヤちゃんって不思議ちゃんだよねー」
「あはは、そうかなぁ……」
あまり嬉しくないけど、笑ってごまかす。
そのあとも温泉まんじゅうを食べたり、
スタンプラリーに参加したりして時間を過ごした。
夜にはライトアップを観に行く約束をして、私たちは旅館に戻ったのだった。