「別に気にしなくていい。あんときは悪かったな」
返事は予想どおりだった。
こっちゃんは残念そうにしていたけど、花平くんはすでに眠そうで。
バスの中でも寝てたのに、まだ眠れるんだ。
きっとまたどこかで寝直すんだろう。
背を向けて歩き出していた花平くんがふいに振り返って、視線がバチッと重なった。
「お前、だいじょーぶ?」
「……へ?わ、私?」
「顔色わるくねーか」
顔色?
自分じゃわからないから、ぺたぺたと頬を触ってみる。
私の顔をのぞき込んだこっちゃんが「そう?いつもと変わんないよ?」って言ってくれたから。
「大丈夫、みたいです。ありがとうございます」
「……あっそ」
離れていく花平くんの後ろ姿を、
こっちゃんは名残惜しそうに見つめていた。