マチコとナツコの2人の音楽を聴かせたあたちは、2人を自分の支配下に置いた。


あたしがトイレに立てば必ず2人がついてくる。


あたしが喉が渇いたと言えば、必ずどちからが飲み物を用意した。


そんなあたしたちを見てクラスメートたちは最初驚いていたけれど、一週間もすればそれは日常として受け入れられるようになっていた。


イジメられっ子が下剋上を果たしたと言うだけの、よくある話だった。


けれど、その日常が定着していくと、クラスメートたちの反応も変わり始める。


マチコとナツコの2人がどれだけクラスメートたちに大きな顔をしても、全く反応しなくなったのだ。


その代わり、あたしとコトハの2人に向けて愛想笑いを浮かべるようになった。


ことある度とにおやつを持って来て「食べてね」と言ってくる生徒もいる。


これが香澄が見ていた世界なのだと、すぐに気が付いた。


あたしもコトハも香澄のようにお金なんて持っていない。


それでも誰かがトップになれば、みんなその人に右習えするらしい。


「あ~あ、平和すぎて落ち着かない」


あたしは大あくびをしてそう言った。