その日の夜。俺は汐里のバイト先である定食屋の近くのガードレールに寄りかかりながら、彼女のことを待っていた。
……あと三十分、か。ちょっと早く来すぎた。
時間を確認するために開いたスマホには、たくさんのメッセージが届いている。すべて遊びの誘いだ。
あんなに毎日ふらふらと意味もなく出歩いていたっていうのに、最近は断ることのほうが増えた。
なんとなく遊ぶ気分にはなれない。こうして遅くまでバイトをしてる汐里のことを考えると、尚更にそう思う。
……と、その時。ビリッと指先が痺れて俺は持っていたスマホを地面に落とした。
右手がじんじんと小刻みに震えている。
今までもこういう症状はたびたびあった。でも電気が走ったような感覚は初めてだ。
自分がどうなっていくのか、どうなってしまうのかは想像もできない。
でも想像しなくてはいけないところまで、来ているのかもしれない。
落ちているスマホに手を伸ばすと、それよりも先に誰かが拾いあげてくれた。
「大丈夫?」
それは、汐里だった。ぼんやりとしてるうちに、どうやら十時過ぎになっていたようだ。