ヒルダは何度も同じ夢をみた。 悪夢だ。 恐怖などという、たったの二文字に収斂(しゅうれん)する事は到底 不可能な、不可解な感情を抱かせる夢。 喪失感と、屈辱感と、たまらない──焦燥感が交錯する。 欲しくてたまらない“何か”は結局手に入れる事が出来ず、別の誰かの懐に…。 気分が悪い。 ヒルダは目を開き、ぼんやりと天井を見つめる。 穴からは星ひとつ見えない。 今日に限って真っ暗だ。 いや、今日だからこそ──。