「じゃあ質問があったらまた来てください」

彼はそう言うと教室から去っていった。

その後、終礼、掃除をすませると、彼女はやっと自分に付けた足枷を外すことができる。

そして、足早に上の階へ向かう。階段を駆け上がり、足を止めたのはB組の前だった。そこは白藤先生のクラスだった。教室を覗くと、そこには二、三人生徒が残っていたが、冬香の目的の人はいなかった。


「松田、君の待ち人はまだ掃除中だよ」


黒板の前の椅子に座っていた先生がこちらに気づき声をかける。それが彼女の中での合図だった。一日一回は先生と話すというノルマ達成のための。