「知ってるんだよ、冬姫が現代にいること。松田冬香、あの子なんでしょ?」
「さあ、どうかな」
「誤魔化さなくてもすぐわかったよ。昔の姿そのままだもん。でもさ、あの子前世の記憶ないみたいじゃない」
自分で言った言葉がハサミとなり、制御していた糸を切った。
瑠美は奥から沸きあがる全ての憎悪と嫉妬に飲み込まれる直前だった。
二人の境遇を哀れだと笑い、また美しいとも思った。
神に選ばれたのは自分なのだと心の底から愉快な気持ちだった。
「可哀想にね。昔あんなに愛した男が目の前にいるっていうのに気づかないなんて!」
瑠美は目を見開いて、彼に顔を近づけたあと、目尻を緩め、嫌に微笑んだ。
「でもまあ当然の報いよ!時の帝の正室である私を差し置いて側室の女が色目を使うからそうなったのよ!」
「もういい、わかったから」
「気分がいいわ!先生は私を選ぶしかないの!ね?そうでしょう?あなたがどんなにあの女を追いかけてもあの子は気付かないの!やっと邪魔者がいなくなったんだから、今度こそ先生は私と結ばれるの!私はずっとあなたを見てきた、一番の理解者なの!あなたには私しかいないの!私が一番なの!私が一番なの!!私が一番なの!!!」