「ねぇ、ひとつ聞いていい?」
人通りの無い下駄箱で冬香は再び口を開いた。
「どうしたの?」
「江川さんって人、先生のこと好きなんだよね?いい噂聞かないって、そんなことしてたら嫌われるんじゃないの」
誰しも好きな人から嫌われることは怖いと感じるだろうし、それを好む人はそうそういないだろう。
彼の性格を吟味した上なら言うまでもなく間違った道であると冬香は感じていた。
「あの人にはそれが唯一の存在証明なのかもね。目立ちたいとか気にかけて欲しいとかそういう事じゃないかな」
「子供ね」
ため息をついて、自分自身の中のその奥に隠れている嫉妬を誤魔化した。
その日の太陽はまだ明るかった。