「じゃあ部活いこっか!先生さようなら」

「さようなら」

「はーい、さようなら」

彼女と彼女の友人は教室を後にし、だいたいの静けさを取り戻した廊下に足音を鳴らしながら階段を降りた。

その途中のことだった。

「ねぇ、冬香ちゃん気付いてた?」

ふと友人がそう聞いた。

「なにを?」

「B組の廊下のところに女子グループが居たこと」

「あぁ…うん。それがどうかしたの?」

「あのグループのリーダーね、うちの担任が大好きなのよ」

「そんな人いっぱいいるでしょ」

当たり前だと、いつものことだと冬香は笑った。

しかし、友人の足は重たげに動きを止めた。それを見て、冬香の笑いも引っ込む。

「あの人は普通じゃないよ。私が見てもわかる。いい噂も聞かないし…」

「その人は私たちに関係ないから大丈夫だよ」

「そうだといいんだけどね。私が掃除から帰ってきたとき、あの人の目、死んでたんだよ。目線の先に二人がいたから、このままじゃ大変なことになると思ったの。逃げないとって思った。多分あれは、恨みに近い嫉妬だよ」